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COP25の要点と会議結果!企業ができる気候変動対策も

2019年12月にスペインの首都マドリードで開催された「COP25」について、何が議題となって何が決まったのかご存じでしょうか?

「どうせ中小企業には関係ないし……」

そんな風に思っている経営者の方も多いかもしれませんが、実は中小企業であってもCOPの議題や会議結果について理解しておくと、メリットが大きいかもしれません。

この記事では、「COP25」の内容が気になっている方に向けて、

  • COP(締約国会議)の意味
  • COP25の要点と会議結果
  • 日本が受賞した「化石賞」について
  • 気候変動対策をリードする日本企業
  • 一般企業がCOPへ参加する方法や注視するメリット

などについて、分かりやすく解説していきます。

そもそもCOPとは何か

COP25について触れるまえに、ここではCOP(締約国会議)の概要を解説します。

COPとは「締約国会議」という意味で、この記事では国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国による「国連気候変動枠組条約締約国会議」のことを指します。
COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)は、地球温暖化をはじめとする環境問題への対処について話し合う国際会議です。2020年2月現在で、25回開催されています。

過去の有名な会議としては、「京都議定書」が採択された1997年のCOP3、「パリ協定」が採択された2015年のCOP21などがあります。

(参考記事:国立環境研究所「COP(コップ)とは?」)
(参考記事:国連広報センター「COP24:国連気候会議」)
(参考記事:環境省「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)・京都議定書締約国会合(CMP)・パリ協定締約国会合(CMA)」)

COP25

本題のCOP25で話し合われた内容とその結果について解説していきます。

COP25では、主に

  • パリ協定6条のルール
  • 2030年の温室効果ガス排出削減目標の見直し
  • 損失と被害に関するWIM(ワルシャワ国際メカニズム)

についての話し合いが行われました。

パリ協定6条のルール

2018年に開催されたCOP24において、パリ協定の細かいルールが話し合われ、「パリ協定6条」を除くルールが合意されました。

COP25では、COP24で合意に至らなかった「パリ協定6条」について話し合いが行われました。「パリ協定6条」とは、排出量の市場メカニズムについてのルールです。
具体的には、国家間で温室効果ガスの排出量を取引できる「排出量取引」の制度を、パリ協定においてどう取り扱うかが話し合われました。
「パリ協定6条」が定める「排出量取引」の制度とは、二国間あるいは多国間の間で「CO2を排出できる上限量」あるいは「CO2の削減量」を取引(譲渡)できるようにする制度のことです。

現状、こういった制度を用いた場合、排出削減量の引き渡し国と、排出削減量の受け入れ国の双方が「○○トンの二酸化炭素を削減しました」という報告ができてしまいます。
これを「排出削減量の2重計上(ダブルカウンティング)」問題といい、排出削減量は増えているのに実質的なCO2排出量は減っていない状態が想定されます。

これでは当然、本来のパリ協定の趣旨から逸脱してしまいます。
しかし、EU諸国をはじめとするCO2削減に積極的な国と、6条を積極的に利用して自国の排出削減目標を達成しやすくしたい主に発展途上国との間で意見が分かれているのが現状です。

結局、COP25でもこの問題に結論が出ることはなく、2020年に開催予定のCOP26に話し合いが持ち越されました。
ただし、「パリ協定6条」の合意がすべての国から得られない場合でも、パリ協定は予定通り2020年から始まります。

(参考記事:国立環境研究所「COP25の概要と残された課題」)
(参考記事:WWFジャパン「COP25報告:パリ協定 積み残されたルールの議論が紛糾」)
(参考資料:WWFジャパン「COP25を前にポイントまとめ(pdf)」)

2030年の温室効果ガス排出削減目標の見直し

パリ協定では、「世界の平均気温上昇幅を産業革命前と比べて2℃未満を目指し、さらに1.5℃未満の達成に向けて努力する」となっています。

しかし、

  • 各国の2030年のCO2削減目標を合わせても2℃達成が困難
  • 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」から、地球温暖化による影響を最小限にするには5℃を目指すべきとの報告書が公表

といった事情を受けて、CO25では2030年の削減目標をさらに引き上げるべきではないかとの話し合いが行われました。
結果として、「削減目標の見直しを推奨する」という表現に留まりました。
しかし、2020年までに削減目標の強化および再提出を行うことを宣言している国(73カ国)や、国内で再度議論を行う国(11カ国)も出始めています。

(参考記事:国立環境研究所「COP25の概要と残された課題」)
(参考記事:WWFジャパン「COP25報告:パリ協定 積み残されたルールの議論が紛糾」)
(参考資料:WWFジャパン「COP25を前にポイントまとめ(pdf)」)

損失と被害に関するWIM(ワルシャワ国際メカニズム)

WIM(ワルシャワ国際メカニズム)とは、COP19で設立された気候変動枠組条約(UNFCCC)の配下組織です。

COP25において、地球温暖化が原因とされる海面上昇などで被害を受けている小島嶼国(太平洋・西インド諸島・インド洋などにある島国)が、このWIMによる金銭的な補填を「緑の気候基金(GCF)」に対し求めました。

しかし、「緩和策・適応策のみを支援対象とする既存の枠内で検討を続ける」という決定が下されました。

(参考記事:国立環境研究所「COP25の概要と残された課題」)
(参考記事:WWFジャパン「COP25報告:パリ協定 積み残されたルールの議論が紛糾」)
(参考資料:WWFジャパン「COP25を前にポイントまとめ(pdf)」)

COP25で日本に与えられた「化石賞」とは

化石賞とは、COPに参加しているNGOネットワーク「気候変動アクション・ネットワーク」が、地球温暖化対策に消極的な政府に対して贈っている不名誉な賞です。
COP25において、天然ガスの約2倍のCO2を排出する石炭火力発電への依存度が高く、また今後の対策も明確に打ち出さなかった日本は、この化石賞に2度選ばれました。

(参考記事:国立環境研究所「COP25の概要と残された課題」)
(参考記事:WWFジャパン「COP25報告:パリ協定 積み残されたルールの議論が紛糾」)

気候変動対策をリードする日本企業

外務省の「気候変動」のページでは、パリ協定の実施に際して、社会経済活動によって発生する温室効果ガスの削減の重要性を改めて言及しています。
その上で、日本の民間企業における気候変動対策・持続可能な社会の実現への取組を紹介しています。

株式会社リコー(RE100)

株式会社リコーは日本で初めてRE100に加盟した企業です。
リコーは「新しい環境目標の設定(2030年・2050年)として、

• スコープ1、2(自社オペレーション)は、2050年ゼロ、2030年30%削減
• 使用電⼒を2050年までに100%、2030年までに少なくとも30%、
再生可能エネルギーで賄う
• スコープ3(調達・使用・輸送)の目標は2030年15%削減

(参考資料:外務省「リコーの新しい環境経営目標とRE100参加について」p10より引用)
といった目標を掲げています。

(スコープ1は「サプライチェーン排出量」における、「事業者自らの温室効果ガスの排出量」のこと。スコープ2は他社から供給されたエネルギーに伴う間接排出のこと。
サプライチェーン排出量については下記記事の「企業のバリューチェーン」への言及をご覧ください)

積水ハウス株式会社(ZEHの推進)

積水ハウス株式会社では、高効率な断熱・エネルギーシステムを導入し、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとする、「ZEH」の新築販売数において、
2013年から2017年3月末までで累計28,195棟を達成したとのことです。外務省のウェブサイトでは、CO2排出削減効果についても言及しており、

2016年度の新築販売棟数の74%がZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)であり,2013年から2017年3月末までの累積28,195棟を達成しました。
また,2009年から2016年までの累積省CO2モデルのCO2排出削減効果は,年間30万トン-CO2に達しています。
2050年までに住宅のライフサイクルでCO2排出ゼロを実現し,脱炭素社会の構築を目指します。

(参考資料:外務省「気候変動対策をリードする日本の企業1」より引用)としています。

一般企業がCOPへ参加する方法や注視するメリット

一般企業にとって、COPは遠い存在かもしれませんが、COP会場で行われている

  • サイドイベントの開催・参加
  • 展示ブースの設置・訪問
などを通じて、COPに参加することも可能です。

(参考記事:国立環境研究所「COPへの「参加」とは?」)
(参考記事:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター「COPへの「参加」とは?」)

一般企業がCOPの動向を注視するメリット

紹介した通り、COPはさまざまな国の政府が参加する国際会議です。ここでの決定が、今後の各国の環境対策を大きく左右します。

近年、深刻化する地球温暖化問題を反映して、企業の環境対策に対しても、消費者や世論から厳しい目が向けられやすくなっています。
COPの動向を注視することで、これからの世論がどういった方向へ傾くのかを事前に予測し、企業の環境経営に活かすことが期待できます。

まとめ

この記事では、2019年12月にスペインの首都マドリードで開催されたCOP25における会議内容や結論について紹介してきました。

議題のひとつだった「パリ協定6条」の話し合いは平行線を辿り、次回のCOP26に持ち越されたほか、
2030年の温室効果ガス排出削減目標の見直しも「推奨する」といった表現に留まりました。

地球温暖化を防止するためにも、2020年からスタートするパリ協定に、世界の国々が本気で取り組んでいくことが求められています。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。