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企業におけるサプライチェーンのリスクとは?具体的な事例や対策

サプライチェーンと、そのサプライチェーンにまつわるリスクについてご存じでしょうか?
「正直、あまり聞いたことがない・・・」という方のために、サプライチェーンの概要や、サプライチェーンの環境的なリスク、大企業が行っている対策や事例などをご紹介していきます。

サプライチェーンとは?

サプライチェーンリスク

サプライチェーンを日本語に訳すと「供給連鎖」になります。「供給連鎖」とは、原材料の調達から販売までの流れにおいて、ビジネスパートナーであるさまざまな企業が携わり、供給を連鎖していくことで、最終的に購入者や消費者にサービスや製品が行き着くプロセスのことを表しています。

例えばエアコンのサプライチェーンを考えてみた場合、

①原材料の調達⇒②ネジなど部品の製造⇒③メーカーによる製品の組み立て⇒④販売

以上のような供給連鎖が予想されます。
サプライチェーンは、このプロセスに関わるすべての企業に当てはまるのです。

サプライチェーンのリスクとは?

サプライチェーンリスク

ここからは、サプライチェーンが内包している環境的な企業リスクについてご紹介していきます。

ESG投資家からの評価

昨今、ESG(環境・社会・企業統治)へ配慮している企業を重視する「ESG投資」が広がりを見せています。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2019年2月28日に発表した資料によれば、日本株パッシブ運用機関が企業のESG活動を重視している割合は、15%から30%にまで上昇しています(2017年度以降)。

また、GPIFの運用受託機関が考える重大なESG課題として、サプライチェーンが上位に入ってきています。つまり、企業単体のESGへの配慮はもちろん、サプライチェーン全体を通してESGへの配慮・活動を行わないと、投資対象から外されてしまうリスクがあるのです。

こうしたことから、自社企業だけでなく、サプライチェーン全体のESG基本方針を定め、それに則って環境・社会・企業統治への配慮・活動をサプライチェーンの企業全体で行っていくことが求められています。

取引先から要請を受けるリスクも

上記のESG(環境・社会・企業統治)の流れとも似ていますが、企業のグローバル化によってサプライチェーンが拡大した結果、販売・納入先の海外企業などからサプライチェーン全体への環境や人権問題への対応を迫られるリスクも存在しています。

代表的な例はAppleが行ったサプライチェーンのグリーン化で、取引先の企業だけでなく、その企業のサプライヤーも含めたサプライチェーン全体での脱炭素化を目指すというもので、取引先である日本企業にも再生可能エネルギーの使用を要請してきたことが挙げられます。
また、2020年に東京オリンピックを控える日本には、関連施設や製品の生産に関わるサプライチェーンに対しても、海外から厳しい目が向けられると予想されます。

CDPサプライチェーンプログラムによる回答要請

CDPサプライチェーンプログラムとは、国際環境NGO「CDP」が行っているプログラムのことで、2019年1月時点で世界の115企業・団体が参加しており、そのサプライヤー(サプライチェーン上で繋がりがある企業)である11,692企業・団体に対して「気候変動・水・森林」への配慮・活動内容を質問し、当該企業団体からの回答を報告書としてまとめる活動を行っています。

2019年2月の始めには、環境省が日本の公的機関としては初となるCDPサプライチェーンプログラムへの参加を表明しました。CDPサプライチェーンプログラムのメンバー企業は年々ふえており、それに伴ってCDPから回答要請を受けるサプライヤー企業も増加しています。
CDPサプライチェーンプログラムの回答要請を受けても慌てないように、自社の温室効果ガス(CO2など)排出量は把握しておきましょう。

サプライチェーンリスクを回避するためには?

サプライチェーンリスク

ここからは、サプライチェーンの環境的な企業リスクを回避するための方策についてご紹介していきます。

グリーン・サプライチェーン・マネジメントが必要

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは、サプライチェーン全体の組立・生産・販売などといった各工程を見直し、最適化して無駄を省くことを言います。

通常、サプライチェーン・マネジメントはより多くの利益を生み出すための手法ですが、最近は「グリーン・サプライチェーン・マネジメント」と呼ばれる手法も出てきています。これは、各工程のCO2排出量などに注目し、さらにCO2排出量を減らせるように改善・最適化していくことを指します。

上記で挙げたようなサプライチェーンの環境的なリスクを回避するために、企業は「グリーン・サプライチェーン・マネジメント」を積極的に実施していく必要があるでしょう。

サプライチェーン全体でCO2の削減目標を立てる

サプライチェーンの環境的なリスクを避けるためには、なによりもまずサプライチェーン全体のCO2排出量を削減していかなくてはいけません。とは言え、何から始めたら良いのか分からない方も多いと思います。
そこで、既にサプライチェーン全体でCO2など温室効果ガスの削減に取り組んでいる大企業の事例を元に、何から始めるべきかを考えていきましょう。

●Honda(本田技研工業株式会社)の事例
Honda(本田技研工業株式会社)は先述した「CDPサプライチェーンプログラム」にも参加しており、高い環境意識を持った企業であるといえます。Hondaでは、主に以下のような活動でCO2の削減を行っています。
  • CO2データの管理システムを運用し、グローバルな各地域のサプライヤー全体とCO2低減目標・達成状況を共有し、PDCAサイクルを回す。
  • ESGの観点から、よりグローバルにサプライチェーンをマネジメントする部門の新設。
  • 四輪車生産部品の輸送における鉄道と船舶の比率を、2017年度から2018年度にかけて25%から38%に増やし、鉄道輸送は27%、船舶輸送は65%のCO2削減を達成。
  • インドにおいて、完成車両の輸送を小型トラックから大型トラックへ切り替え、一度に多くの車を輸送することで、1年間で約6,226tのCO2排出量を削減。
  • サプライヤーに対する「監査用チェックシート」の配布や第三者監査の実施。
●アシックスの事例
2019年6月12日、アシックスはスポーツメーカーとしてはじめて「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に賛同しました。そして、自社はもちろんサプライチェーンにおける関係企業も含めて、環境に対して配慮した事業活動を行うことを宣言しています。
その活動の一環として、CO2排出量削減目標を以下のように立てています。
  • 2030年までに、アシックスの事業所のCO2排出量を、2015年比で33%削減する。
  • 2030年までに、サプライチェーンにおけるCO2排出量を1製品あたり2015年比で55%削減する。

こうした目標を達成するために、アシックスの事業所では太陽光発電などの再生可能エネルギーへの切り替えを積極的にはじめています。また、サプライチェーンにおけるCO2排出量を削減するために、サプライヤーとの具体的な協議も行っています。

●NEC(日本電気株式会社)の事例
NEC(日本電気株式会社)でも、サプライチェーンに関する環境リスクへの対応として、「2050年に向けた気候変動対策指針」を以下のようにまとめています。

  1. サプライチェーンのCO2排出量をゼロにするための削減
  2. サプライチェーンによる気候変動リスク対策の徹底
  3. 低炭素社会(世界全体の温室効果ガスを2010年比で70%削減)の実現
  4. 気候変動リスクに強い安全・安心な社会を実現する

こうした目標を達成するために、NECでは「AIやIoT、ビッグデータ等のIT関連技術の活用」や、「自社工場やビルへの太陽光発電システムの設置」を進めています。

中小企業にもオススメ!自家消費型太陽光発電でCO2を削減

サプライチェーンに携わるいずれかの企業が温室効果ガスを削減すると、業務の委託先が削減した温室効果ガス排出量は、委託元を含めたサプライチェーン全体の温室効果ガス削減量としてカウントされます。
つまり、サプライチェーン内の1つの企業がCO2などの温室効果ガスを削減すると、サプライチェーン全体の削減につながるのです。自社だけでは排出量の削減に限界があるため削減基準をクリアするのが難しい場合がありますが、サプライチェーン全体で削減することで基準をクリアしやすくなるというメリットもあります。

●サプライチェーン排出量の削減には自家消費型太陽光発電が効果的
サプライチェーン排出量を効果的に削減するためには、自家消費型太陽光発電がオススメです。
太陽光エネルギーから電気をつくりだす太陽光発電は、火力発電と比較してCO2の排出が少ない電源として、地球温暖化対策としても注目されています。さらに最近では、工場などの法人施設の屋上に太陽光発電を設置し、つくった電気を自社で消費する「自家消費型太陽光発電」を設置する企業が多くなっています。

自家消費型太陽光発電は、設置するだけで毎月の電気代を削減できるのでコストを減らせるだけでなく、上記でご説明したサプライチェーン排出量の削減にも役立てることができます。
初期費用がかかるのがネックですが、最近では初期投資ゼロ(契約締結諸費用は別途必要)※の「PPAモデル」も、徐々に普及しはじめています。つまり、サプライチェーンの原材料調達から販売に至るまで、あらゆる企業で自家消費型太陽光発電を設置する環境が整いつつあるということです。

※ここでの「初期投資」とは、本システム導入に関する施工関連費用(工事代金、機器代金、設計技術費用等)を指します。
※契約金額に応じた印紙や切手など契約締結にかかる諸費用は別途かかります。
※契約期間満了後の設備の取り扱いに関しては契約の内容により異なり、保有する場合には追加の費用が発生する場合もあります。
※PPAは個別に審査があり、契約期間や電気利用料は契約で取り決めます。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。