工場立地法と緑地の関係?太陽光発電設備も環境施設になります
工場に携わっている方なら「工場立地法」はすでにご存じだと思います。
しかし、なぜ工場立地法に基づいて環境を考慮した工場を建てなければならなくなったのか、あるいは花壇や芝などの緑地や運動場や太陽光発電設備といった環境施設を導入するメリットはあるのかなどについて疑問に思ったことはないでしょうか。
この記事では、工場立地法の概要や、企業にとってのメリットをご紹介します。
目次
- 工場立地法の基礎知識
- 工場立地法とは
- 工場立地法の制定の背景
- 緑地・緑化について知っておきたいこと
- 工場立地法の届け出義務が発生する工場
- 工場立地法における緑地
- 工場立地法で義務付けられている面積要件
- 屋上も緑地として利用できる
- 緑地確保のメリットとデメリット
- 緑化はCSR活動やイメージアップにつながる!
- 除草作業や建物の体制チェックといった負担も
- 太陽光発電施設は「環境施設」として認められる!
- もちろん、太陽光発電にはデメリットも考えられる
- 工場立地法の対策として、太陽光発電も選択肢のひとつに
工場立地法の基礎知識
工場立地法とは
工場立地法とは、公害や環境破壊を防止するため、工場を建てる際に守らなければいけない法律です。
一定の規模を超える工場にはこの法律が適用され、都道府県または市町村(以下、市町村等とします)への届け出義務があるほか、周辺地域の快適な生活環境を形成するよう努めなければなりません。
具体的には、緑地や修景施設、太陽光発電設備、あるいは屋外運動場といった「環境施設」と呼ばれる施設を敷地面積の一定割合以上設ける必要があります。
工場立地法の制定の背景
そんな工場立地法が制定される背景にあったのは、高度経済成長期の急速な工業発展による公害問題です。そのうちのひとつ「四日市ぜんそく」を例に挙げると、三重県四日市市のある工場から排出された硫黄酸化物などが原因で、地域の方々が公害被害を受けたため訴訟を起こしました。
その結果、工場経営者に過失があったとして、被害者に対する損害賠償の支払いが命じられました。
こうした時代に工場立地に反対する運動が各地で活発化したため、国が、経済の発展と福祉の向上を両立する観点から「企業は環境保全に取り組むことを必須とする」法律を制定しようとしたのが工場立地法のはじまりです。
緑地・緑化について知っておきたいこと
工場立地法の届け出義務が発生する工場
現在、この工場立地法の届け出義務が発生する工場は、
- 1.製造業
- 2.電気・ガス・熱供給業者(水力・地熱・太陽光発電所は除く)
の2種類で、規模は敷地面積9,000㎡以上、あるいは建築面積3,000㎡以上のものです。
これに該当する場合、工場を新設あるいは変更する前に、市町村等へ届け出をする必要があります。要件を満たしていなければ、勧告や変更命令が出されます。
工場立地法の制限で重要なのが、緑地や環境施設を設けなければならないことです。しかし、一概に「緑地」といっても、どういったものが該当するのでしょうか。
花壇や低木でもよいのか、野菜を育てていても緑地と扱われるかなど、さまざまな疑問をお持ちになる方もいらっしゃるかと思います。
工場立地法における緑地
工場立地法における緑地は、
- 1.樹木が生育する土地
- 2.建物屋上などに設置されている緑化施設
- 3.周辺地域の生活環境を守るために役立つもの
- 4.手入れがきちんと施された地被植物で表面が覆われているもの
と定められています。
具体的には、花壇や樹木、適切な維持管理がなされている草地(芝生、コケ)などが緑地に該当します。
雑草が生えている土地でも、きちんと管理されていれば緑地としてみなされます。
(ただし、野菜畑や温室、ビニールハウスなどは緑地として換算されません)
工場立地法で義務付けられている面積要件
なお、緑地を含め、工場立地法で義務付けられている面積要件は以下の通りです。
分類 | 面積要件 |
---|---|
生産施設 (工場、及び屋外プラント) |
敷地面積の30~65% (業種により8段階に分かれる) |
環境施設 (修景施設、運動場、太陽光発電施設など) ※含む緑地 |
敷地面積の25%以上 ※緑地面積は環境施設面積に含む ※緑地のみとする場合には、緑地25%以上 |
緑地(花壇、芝、樹木など) | 敷地面積の20%以上 |
生産施設とは、工場や屋外プラントのことを指し、業種によってパーセンテージが異なります。
その他、事務所や研究所、倉庫などについては面積の規定がありません。環境施設とは、緑地のほか、噴水・水流などの修景施設、屋外運動場、広場、体育館、博物館、太陽光発電施設などを指します。
つまり「敷地面積の25%以上の環境施設が必要で、そのうち緑地は最低でも敷地面積の20%以上が必要」ということです。
ただし、1997(平成9)年の法改正において、緑地面積と太陽光発電設備を含む環境施設面積は「地域の実情に応じて条例で変更できる」とされているため、エリアによっては上記の表と異なるケースがあります。
ですので、工場を新設する場合には、各市町村等に前もって問い合わせておくのが確実です。
屋上も緑地として利用できる
さらに2004年の法改正により、壁面や屋上も緑地面積として算定できるようになり、活用できる敷地面積を広く確保することができるようになりました。
そのため、これまで緑地として使用していたスペースを、駐車場や事務所などに変更し、有効に使うことができます。
最近では、工場だけでなくショッピングセンターやデパートの屋上も、緑化されていることがあります。
緑にはリラックス効果があるといわれているので、近くに森林が少ないエリアなら、屋上を緑化することでオアシスのような存在に生まれ変わるかもしれません。
緑地確保のメリットとデメリット
緑化はCSR活動やイメージアップにつながる!
経営者のなかには、「緑地に敷地面積を取られる分、損をするのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、緑化にはさまざまなメリットがあります。
例えば、屋上を緑化すれば太陽の熱を軽減できるため、工場内部の温度上昇が抑制されエアコンの使用量を抑えることができるので省エネや節電にも役立ちます。
さらに植物は二酸化炭素を吸収してくれるため、地球温暖化対策にもつながりますから 企業のCSR(企業の社会的責任)活動として取り入れることも可能です。
グリーンカーテンを活用した場合には、工場の景観がよくなり企業のイメージアップにもつながるでしょう。
また工場内の騒音緩和や防塵に繋がるほか、緑には気持ちを落ち着ける効果があることから従業員のストレス軽減なども期待できます。
なお、屋上緑化の場合には、国や都道府県などから補助が受けられる可能性もあるため、事前に問い合わせてみましょう。
除草作業や建物の体制チェックといった負担も
一方、緑化にもデメリットがあります。
一番に挙げられるのが、水やりや除草作業など、季節に応じた対応が必要なことです。
夏になると虫が増える可能性もあり、製造業の場合では建物内に虫が侵入して異物混入につながる恐れもあるため注意が必要です。
もちろん、虫が発生しにくい植物を選ぶといった工夫によってある程度防止することはできますが、こまめなメンテナンスは考えておく必要があります。
また屋上は日差しが強く乾燥しやすいうえ、水やりがしづらい場所のため、自動灌水設備を整えるなどのコストが別途かかる可能性も考えられます。
さらに、壁面や屋上を緑化する場合には、建材の腐食や劣化にも気をつける必要があります。
既存の建造物に設ける場合には、十分な耐性がないケースも想定されるため、事前に荷重対策や、防水処理の強化などを行う必要があるかを考慮しなければなりません。
設置した後も定期的にチェックしておかないと建物に負担がかかってしまう可能性があるため、メンテナンス費用も考慮しておきましょう。
近年は、軽量で簡単に取り付けられるものがあるほか、設置業者が引き渡し後の保証をつけてくれる場合もあるため、確認しながら進めるのも大切です。
太陽光発電施設は「環境施設」として認められる!
加えて、2012年の法改正で産業用太陽光発電設備も環境施設として認定され、太陽光発電設備を設置するという方法でも屋上を活用できるようになりました。
これまでの環境施設の定義では、噴水や運動場、広場などを指しますが、これらは景観をよくしたりストレス発散したりといった効果はあるものの、工場を運営する上での魅力はあまり感じられませんでした。
しかし太陽光発電設備なら、「環境施設」でありながら、さまざまなメリットを享受することができるため、敷地の有効利用の面からも注目されています。
太陽光発電設備を導入するメリットとは?
太陽光発電設備を導入するメリットは、緑化同様に節電や節約に役立つことです。太陽光発電で発電した電気を使うことで、電力会社から購入する電気量を減らすことができます。
さらに蓄電池を併設しておけば、太陽光発電で発電した電気をより効率よ使うことが可能ですし、災害時や停電時には非常用電源としても活用できます。
また太陽光発電はCO2が発生しない環境にやさしい設備ですので、CSR活動の一環としてアピールすることもできます。
もちろん、太陽光発電のデメリットも考えられる
太陽光発電はメリットが大きい一方、初期投資費用が高く、メンテナンスが必要であるといった点は無視できません。
特に産業用太陽光発電の場合は規模が大きいため費用も高額になります。
その反面、自家消費を目的とする太陽光発電の場合には節税として役立つ場合もあります。
太陽光発電が経営力向上設備とみなされれば税額控除が受けられるケースもあるため、経済産業省のホームページも確認してみましょう。
一方で、太陽光発電は発電量が天候に左右されるほか、自然災害による被害など想定外の事態もある程度考慮しておく必要があります。
工場立地法の対策として、太陽光発電も選択肢のひとつに
工場を新設・変更するにあたっては、面積要件を満たす緑化や太陽光発電設備など環境施設を設ける義務がありますが、うまく活用すれば節電や企業のイメージアップにつなげることができます。敷地の有効活用という工場立地法の面でも役立つ太陽光発電を取り入れてみませんか?