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自家消費型太陽光発電にメンテナンスは必須。重要性と点検項目を解説

自家消費型太陽光発電

工場や倉庫の屋根に自家消費型太陽光発電システムを設置して自家発電を行った電気を使うことで、電気を買う費用を抑えたり、あるいはライフラインが緊急時に使えない場合でも電気を確保できる手段として利用したりする企業が増えています。
では、太陽光発電システムを設置した後のメンテナンスは必要なのでしょうか。また、設置後のメンテナンスのやりかたによっては、設備の寿命が延びたり、発電量が影響したりするのでしょうか。
今回は、自家消費型太陽光発電システムのメンテナンスの必要性と、メンテナンスをするにはどうするのかについて考えてみましょう。

太陽光発電はメンテナンスフリーではない

売電目的の太陽光発電システムでは、2017年4月から施行された「改正FIT法」によりメンテナンスが義務化されました。
また、一般社団法人日本電機工業会と一般社団法人太陽光発電協会により作成された「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(第二版)が公開(2019年)されています。

「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(第二版)によると、まず、太陽光発電システムは発電設備であり、設置・管理する責任者は発電設備の所有者であることを明記しています。
さらに、発電設備の所有者は電気事業法第39条または第56条に基づいて、所有する発電設備を、経済産業省令で定める技術基準に適合させる義務があるとしています。
そのため、技術基準に適合しない状態にならないように、維持しておく必要があるのです。
また、工場などの屋根に設置する自家消費型太陽光発電の場合、出力50kW以上の場合は電気事業法上の「事業用(自家用)電気工作物」となり、下記のような義務が発生します。

(1)経済産業省令で定める技術基準に適合するように電気工作物を維持する義務。(法第39条)
(2)電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を定めて届け出る義務。(法第42条)
(3)電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために、電気主任技術者を選任して届け出る義務。(法第43条)
(その太陽電池発電設備が高圧以下で連系する出力2,000kW未満の場合は、経済産業大臣又は産業保安監督部長の承認を得て自家用電気工作物に関する保安管理業務を外部に委託することもできます。)
(4)その太陽電池発電設備が出力2,000kW以上の場合は、設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出る義務。(法第48条)
(5)その太陽電池発電設備が出力500kW以上2,000kW未満の場合は、使用の開始前に技術基準に適合することを自ら確認し、その結果を届け出る義務。(法第51条の2)

引用元:経済産業省「産業保安規制の業務内容>電力の安全>太陽電池発電設備」より

太陽光発電システムの定期的なメンテナンスは、条例や法律による義務であるのみならず下記のような観点からも重要であると考えられます。

定期的なメンテナンスが重要な理由

ではなぜ、太陽光発電システムの定期的なメンテナンスが必要でそれが重要であるのかを項目ごとに確認しましょう。

保守点検が義務化されている

上記に示したように、電気事業法第39条または第56条に基づいて、所有する発電設備を、経済産業省令で定める技術基準に適合される義務があります。
よって、それに適合させるために保守点検しなくてはなりません。
もし必要な補修をしないまま稼働を続けていると、「技術基準適合命令」により、経済産業省や地域の産業保安監督部の公開する情報サイトなどで公表される場合があります。
また、太陽光発電システムの状態が悪いと判断されると、稼働の停止を命じられることもあります。

発電効率を維持する

太陽光発電システムは、定期的なメンテナンスによって発電量の維持が期待できます。
太陽光発電システムに使用されている太陽光パネルは屋外で風雨にさらされているため、汚れが付着します。
また、飛来物がパネルを覆う場合や、鳥や小動物のフンで汚れることがあります。
トラブルを確認し、解決するためにも定期的なメンテナンスを心がける必要があります。

ソーラーパネルの劣化を確認し、良好な状態を維持する

ソーラーパネルや必要な電線は屋外に設置されているため、経年および風雪による劣化が進みます。
また、ソーラーパネル自体が破損するばかりでなく、設備を固定している部品の緩みや腐食などがおこる場合があります。
固定部品がひとつ欠落しているだけでも、長期使用の間に設備全体の歪み、土台の破損、やがてソーラーパネルの破損へと結びつく可能性があります。
安全性の面からも、発電効率の面からも定期的な確認と補修が必要です。

自家消費型太陽光発電の定期メンテナンスのチェック項目・チェック頻度

では、定期的なメンテナンスでは何をどのくらいの頻度で確認することが必要なのでしょうか。
一般社団法人日本電機工業会、および一般社団法人太陽光発電協会によって定められた「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(以下 保守点検ガイドライン)には、工場の屋根屋上に設置した「屋根設置」の太陽光発電システムの、定期点検の例が記載されています。

参考資料:太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン

工場などで高圧受電する太陽光発電は事業用(自家用)電気工作物。電気主任技術者の管理が必要

前提として、工場などの高圧受電する施設に太陽光発電システムの場合、
電気事業法における「事業用(自家用)電気工作物」になること、および電気主任技術者による管理が必要となります。

注記 1 工場など高圧・特別高圧で受電契約をしている構内にPV システムを設置した場合、発電規模に関係なく、事業用(自家用)電気工作物として扱う必要がある。
注記 2 事業用(自家用)電気工作物は,保安規程を定めて電気主任技術者が管理する義務があり、この附属書に掲げる点検項目と要領は保安規程における点検項目と点検頻度の一例である。

参考:太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」p45より引用

よって、電気主任技術者を選任の上、保安規定を定めて届け出る義務が発生します。

自家消費型太陽光発電(高圧受電・および発電量50kW以上)の主な点検項目

高圧受電する施設、および発電量が50kW以上の事業用(自家用)電気工作物の場合、定期点検の内容を定めた保安規定を作成・届け出る義務が生じます。
太陽光発電システム保守点検ガイドライン」のp59には、届け出に必要な点検項目と点検周期の目安が掲載されています。ここではその中から一部項目をご紹介いたします。

点検対象・点検箇所 点検項目 点検周期
太陽光電池アレイ(太陽電池モジュール) 表面・裏面の汚れ、破損、フレームの破損、変形など 表面の汚れは日常点検として週1回
裏面の汚れ、フレームの変形は6カ月に1回
太陽光電池アレイ(コネクタ・ケーブル) 破損、変形、汚損、腐食など 6カ月に1回
架台 ボルト・ナットの緩み、基礎の歪み、変形・腐食など 破損、変形、汚損、腐食など6カ月に1回
パワーコンディショナー 外箱の破損、配電・電線管の破損、防水処理、異常音、など 外箱・異常音・異臭の点検は週1回
配電・電線管などは6カ月に1回
参考:太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」 p59-p64)(上記表は「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」 p59-p64の定期点検例の一部です。実際の保安規定作成・および定期点検の際は電気主任技術者への相談の元、太陽光発電システム保守点検ガイドラインをご確認ください

上記に記載した以外にも、接続箱、集電箱、電力量計、漏電遮断器といった点検対象で、点検項目と点検周期が掲載されています。点検項目の多くは目視ですが、パワーコンディショナをはじめとした電子部品が含まれる点検箇所では、測定が必要とされています。
また、点検周期も、週に1回程度の日常点検から、月次~年次の定期点検まで、項目によって周期が異なっています。
上記ガイドラインを一読することで、導入後の点検内容がイメージできるのではないでしょうか。

メンテナンスは誰に頼むべきか確認するポイント

定期的に太陽光発電システムの点検を行う必要がありますが、では誰が行うのが適切でしょうか。

プロに依頼する

ソーラーパネルの破損や汚れ、周辺環境の保全などは設備所有者や会社の従業員でも行えるでしょう。もちろん、個人でも破損箇所がないか、汚れてはいないかなど、目に見える範囲での点検をすることは大切です。
また、パワーコンディショナーなど操作をする機器では、異音や異臭がしていないか、熱を発していないかなどの確認も行えます。
しかし、自己判断で『大丈夫』と決めつけたり、修理をしたりするのは、危険です。単純だと思われる周辺の草刈りだとしても、間違って接続線や電線を切断する可能性もあります。必ず専門知識のあるプロに依頼するようにしましょう。

また、もし日常の点検の中で不安な箇所を発見したら、定期点検以外でも専門企業の担当者に連絡を入れ、確認をしてもらいましょう。もちろん、専門家に依頼をすると費用が発生しますが、この費用は太陽光発電システムを活用するための必要経費だと考え、用意しておくようにしましょう。

自家消費型太陽光発電のメンテナンスを依頼する業者の選び方

自家消費型太陽光発電のメンテナンスを依頼する際、どのような業者を選定するべきでしょうか。
業者を選ぶときのポイントを確認しておきましょう。
確認したい項目は以下の通りです。

メンテナンス費用
複数の企業がメンテナンスに対応しています。サービス内容と価格を比べ、選びましょう。総合比較サイトなどの評判を確認することもヒントになります。
しかし、当然ながら設置場所の条件や規模によって値段は変化しますので、あくまで目安として、実際に見積もりを出して比較検討するようにしましょう。
対応の良さ
太陽光発電システムは長期にわたり利用するものです。メンテナンスをしていても、予期せぬ飛来物による被害が発生する場合があります。
そのような事態を想定し、迅速に対応できる業者を選定しましょう。
点検後の報告とアドバイス
定期的な点検は滞りなくしてくれる企業でも、その点検の結果がどうであったのか、どのような変化が見られたのか、なにを改善すべきで、どのように対応したのかなど、点検後の報告を丁寧にわかりやすく行ってくれる業者であることが重要です。
また、「今後、どれくらいの時期にはどのようなことに対応する必要がでてくると考えられる」といったアドバイスをしてくれる企業であれば、より安心して任せることができるでしょう。
太陽光発電システムの運用に関する相談対応
太陽光発電システムをどのように活用すれば、消費電力にかかる費用が抑えられるのかといった運用方法についても相談にのってくれる体制のある業者を選ぶようにしましょう。

設置時にモニタリングシステムを導入するのも有効

太陽光発電システムのメンテナンスを専門の企業に依頼するのと並行して、モニタリングシステムの導入も検討しましょう。

モニタリングシステムとは、ソーラーパネルの各ストリング電流と電圧を分単位で計測することで、発電状況を遠隔で監視できるシステムです。
システムによっては感知した情報を、インターネットを通じて警報メールとして受け取れるものもあります。

このようなシステムを設置しておくことで、早期に異常を発見でき、トラブルを回避することで修理費用の削減に繋げることにもなります。

まとめ

工場や倉庫などに自家消費型太陽光発電システムを設置する場合、設置した太陽光発電システムの定期的な点検は避けられません。
設置者として定期点検が義務化されているだけではなく、定期的な点検によって発電量の低下やトラブルを未然に防ぐことが期待できます。
導入後のメンテナンスについても事前に相談し、不安点を解決できる業者を選びましょう。

※記載内容は掲載当時のものであり、変更されている場合がございます。